全体の印象として、とても読みやすいなと感じました。
読書に不慣れな私でも最後までスイスイと読むことができた一冊です。
読み終えた直後は、ハッピーエンドで皆が報われて本当に良かった!とウルウルきました。
落ち着いた今振り返ってみると、人との繋がりの大事さを強く感じさせてくれた作品だと思います。
まず最初のヒーローと呼びたい神谷弁護士。
この人が登場して活躍してきたあたりから一気に夢中に。
神谷氏を紹介してくれたのは元妻でしたね。
個人的には、元妻や長女や母が登場する場面は全て好きです。
それは、仕事で困難に立ち向かい続けている佃社長が唯一少し休めてる時間なような気がして、ホッとした気持ちになれたからです。
社内に目を向けてみると、部下の大事さ、仲間のありがたみを感じる場面がいくつもありました。
最初は佃社長の夢に反対する従業員もいましたが、それぞれが自分の仕事に責任と誇りをもっていたからこそ、最終的には一致団結することができ、社長の夢からみんなの夢へと変わっていったんだと思います。
それにしても特許ってのは凄い力ですね。
大企業人間達の見栄や傲慢さ、保身の為ならなんでもやってやるという精神、隠蔽体質みたいなものをここまで炙り出すわけですから。
しかし、そんな大企業の中にも良心を持った人間はいるわけです。
素直に良い物を良いと認める事ができる財前や浅木という男達がいて救われた思いでした。
この作品の主人公は誰?と言われたら佃社長だとは思うのですが、個人的には殿村経理部長もなかなかの影の主人公っぷりだった印象です。
元銀行員という最初の印象からここまで良い印象に変わるとは思ってもみませんでした。
それはこの作品で私が嫌いな場面の1つでもある、白水銀行の連中達による手のひら返しが良いアシストをしているようにも思えます。
裁判で佃製作所がナカシマ工業に実質的に勝利したからといって、現銀行員達があんなにわかりやすく媚びてきたとこは反吐が出ました。
逆にこの作品で一番好きな場面は、「神谷弁護士を紹介してくれてありがとう」と佃社長が元妻に感謝を述べた後(P224)です。
研究者としての佃社長を誰よりも知っている元妻だからこその発想、発言に感動しました。
この場面は、特許使用料を取るか、もしくは違う選択をするか悩む佃社長にとって大きな転換点だったと思います。
最後に、もし私がこの下町ロケットの世界に存在したならばどのポジションになれるかな、なりたいかなと考えてみました。
現実的に言えば、現在の私にとって一番身近な存在は下町の中小企業なので、頑張っても一従業員かなとは思います。
ですが理想を言うならば、ナカシマ工業の法廷戦略をやり玉に挙げる特集記事を書いた東京経済新聞の高瀬という記者になりたいですね。
事実を曲げずにありのままを記事として書いた姿勢がカッコよすぎます。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。