大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺され、それの解明をすべく話が進んでいった第一章。
事件が解決しないまま第二章に進み、亮司と雪穂の中学時代に時が進む。
こういう時の流れを見せてくる作品って個人的には大好きなので、「これは面白くなる」と確信。
ドラクエで言えば、ドラクエ5みたいな父との幼少時代~大人になり~その後、みたいな。
第二章の段階ですでに、亮司と雪穂はグルなんじゃないかと思わせる描写が出てきますが、結局最後の最後まで直接2人がやり取りしてる描写はありません。
「いつ、直接やり取りしてる場面が出てくるのだろう」という気持ちが次のページをめくらせるモチベーションの1つでもあったので、最後までうまいことかわされた思いです。
ただ、直接の描写はなくとも、2人のどちらか+第3者の絡みを描いてるその裏で、もう1人がどのように関わっているのかが想像しやすいようになっています。
亮司パートと雪穂パートが絡み合ってお互いの話を補完していく構成が凄い。
話が進むうちに、「おそらく雪穂はクソだろう」と明らかになっていくうちに、段々とミステリーというよりホラー要素を感じるくらい怖くなりました。
雪穂の鈴の音の伏線が回収された場面ではゾクッとしましたね。
中盤あたりまでくると、第3者が登場するたびに「ああ、次はこの人が犠牲者かな・・・」と、新たな章を読み進めていく楽しみが生まれました。
2人にとって都合のいい人物はとことん利用され、邪魔になる人物は排除される。
最後まで読んで今も少し疑問に残っているのは、亮司と雪穂の間には愛はあるんか?ということ。
最初の殺人が2人だけの秘密なのは分かりますが、それだけでそこから19年間ずっとつながり続けて、亮司は実行犯となり続けてきたのでしょうか。
(殺人をそれだけでっていうのもあれですが)
中学時代、雪穂が手編みの小物入れにRKとイニシャルを入れたことや、自分の店の名をR&Yと付けたこと。
RKは桐原亮司のイニシャルで、R&Yは亮司&雪穂と想像するのは簡単です。
最後の最後の描写で、雪穂が顔色一つ変えず、振り向きもせず立ち去ったことがより一層分からなくさせています。
私的には、この2人には愛があったんだと解釈しました。
最初の殺人が起こる前、図書館で2人仲良く切り絵などをして遊んでいた時期でこの2人は時が止まっているんだと思いました。
その時の、本当の意味で純粋に楽しかった2人共通の思い出が、イコール愛という形になって繋がり続けたのかなと。
最後の最後の描写は、雪穂の悪女っぷりと、亮司の為にも最後までやり通さねばという強い気持ちが現れた結果なんだと解釈。
ミスリードによくハマる私の解釈なので当てにはなりません。
東野圭吾さんの小説を初めて読みましたが、1つ1つの文章が短かめでテンポよく感じて読みやすかったです。
「~した」「~だった」の使い方が印象的でした。
個人的には現在のところベスト1と言えるくらい面白かった!